4.不思議な不思議な予言の話

私が上京したのは1994年の12月中旬でした。
約一ヵ月の研修期間を終え、やっと仕事に出たのが1月24日ころでした。2月になったある日、五十嵐さんが「ペニーピアスというカバラの数秘術をする人に見てもらった」という電話をくれました。
「カバラの数秘術」という名前の本を以前買ったことがありました。
人のアーキタイプ(元型)を誕生日で9つに区分けし、さらにその人の人生の周期を、一年ごとに開始から完成ということばで分類し、さらに直感でその人の人生の目的を観るということでした。

私は始めたばかりの仕事のことよりも、自分の人生やずっと気になっている初恋の男性のことなどを聞きたくて、目黒の権之助坂のホテルにセッションを受けに行きました。
ピアスはきれいな小柄な外国人でした。
しばらくの間ペニーはトランス状態になりました。
そのあとペニーが不思議なことを話したのです。

「響、あなたのこの人生の目的は男性ではありません。
私には本が見えます。日記をつけていますか。本、本に関連した仕事……本を書くのか、どうか分かりませんがとにかく本です。日記をつけてください。そう、文章の訓練をすることです」と言いました。
「9月になるとあなたはどこか体の調子をくずします。働くのが辛くなって転職を考える……そのあと、本、本がきます。11月頃でしょう。
あなたはこの仕事を辞めることになります」「失業するのではなく、ほかの仕事……何かの仕事はします。でも今の仕事は辞めるでしょう。」

今でもそのときの英語のテープがあります。
その時、私は(そんな、馬鹿な。私はN市から来て、この仕事に就いたばかり、研修が今終わったところなのになんてことを言うんだ、この人は!)と思いつつ、複雑な気持ちでそこを出ました。
そしてそのことを早く忘れてしまおうと思いました。

五十嵐さんにも報告の電話を入れないまま英語教材の仕事に専念しました。本当によく歩きました。
だんだん仕事の要領が分かってくると仕事が楽しくなってきました。
住所と電話で相手のことを想像して出かけて行きます。
いろいろな人生に会えます。
若い母親たちの子どもを育てている現場を観ることもできました。

6月には自分でも信じられないほど契約がとれました。
そうなるとアドレスカードは一気に増えますが、なかなか感触のよいカードが送られて来ました。
ところが八月に入ると、頑張っている割には思うように契約がとれず、苦戦しました。
そのころから肩やひじが重くなり、仕事にでかけるのが苦痛になってきました。アドレスカードのお客に電話をするのですが「説明に来てください」という答えをもらえなくなりました。

デモの回数が減ります。
電話のアポイントも取れなくなってしまいました。
一枚4千円のカードーがどんどん無駄になって行きました。
おまけにたまに営業に出かけると、とんでもない程遠い場所で交通費も馬鹿になりませんでした。
それでも一度伺った所に電話をかけて出かけていったりして自分なりの工夫をこらして仕事を続けていました。
なにしろ半分家出状態で始めた仕事です。なんとかこの仕事を「もの」にしなくてはならなかったのです。

次は、「5.翻訳、つまり本が来た!」